ご家族が孤独死で見つかった、事故があった——そんなとき、「部屋をどうすればいいのか」「自分で片づけられるのか」と、途方に暮れてしまう方は少なくありません。
普通の掃除では元に戻せない現場を、専門の技術できれいにするのが「特殊清掃」です。
先に、結論からお伝えします。
- 特殊清掃とは、汚れ・におい・害虫を専門の技術で取り除く清掃。孤独死・事故・ゴミ屋敷などで必要になります
- 費用は状態しだいで、特殊清掃だけなら軽度10〜30万円・重度50〜100万円以上。遺品整理や原状回復まで含めると、総額はさらに大きくなります
- 費用は原則、相続人や連帯保証人が負担します(大家さんの孤独死保険が使える場合も)
- 特殊清掃には公的な免許はなく、資格はすべて民間。だからこそ、選び方を知っておくことが何より大切です
私たち「くらしの味方 開拓札幌」は、札幌で遺品整理の相談窓口を運営するなかで、特殊清掃が必要なご相談も多くいただきます。特殊清掃そのものは、対応できる専門業者にお繋ぎして進めます。この記事では、費用・作業・法律・業者選びまで、一次情報にあたって正直にまとめました。
特殊清掃とは?(普通の掃除との違い)
特殊清掃とは、孤独死や事故などで汚れてしまった部屋から、汚れ・におい・害虫を専門の技術で取り除く清掃のことです。状態によっては、床材の張り替えなどの原状回復(リフォーム)が、別途必要になることもあります。
普通の掃除との、いちばんの違いはここにあります。
- 普通の掃除:目に見える汚れやほこりを取り除く
- 特殊清掃:汚れが深くしみ込んだ床や壁の撤去、しみついたにおいの除去、害虫の駆除まで行う
市販の消臭剤では、なぜ取れないのか
「消臭スプレーを撒けば、においは消えるのでは?」と思われるかもしれません。ですが、それでは消えません。
時間が経った現場では、汚れやにおいの元が、床のすき間から床下、壁の奥、建物の構造部分にまで、深くしみ込んでいます。表面に芳香剤を撒いても、しみ込んだ元が残っているので、においは必ずぶり返します。
表面のにおいだけを抑えても、しみ込んだ元が残っていれば、においは戻ってきます。だからこそ、専用の薬剤・機材と、経験を持つ専門の業者が必要になります。
特殊清掃が必要になるのは、どんなとき?
特殊清掃は、次のような場合に必要になります。
孤独死・自然死で、発見が遅れたとき
一人暮らしの方が亡くなり、時間が経ってから見つかった場合です。特殊清掃が必要になる、もっとも多いケースです。
日本少額短期保険協会の孤独死現状レポートによると、発見までにかかった日数は平均で約19日とされています。時間が経つほど、汚れやにおいは広がります。
事故や事件があったとき
室内で事故や事件があり、汚れやにおいの原状回復が必要な場合です。
ゴミ屋敷・強いにおいがあるとき
長年ものが片づけられず、衛生状態が悪化した部屋や、ペットの多頭飼育などで強いにおいが残る場合も、特殊清掃の対象になります。
いずれも、「普通の掃除では、においや汚れが取り切れない」というのが共通点です。放置すると、においや害虫が近隣へ広がったり、汚れが床下まで進んで原状回復の費用がふくらんだりします。気づいたら早めに動くことが、費用の面でも大切です。
逆に、まだにおいや汚れがひどくない“汚部屋”の段階なら、自分で片付けられます。手順は汚部屋の片付け方【8ステップ】でどうぞ。
孤独死が見つかったら、まず何をする?
特殊清掃の前に、順番があります。動揺されていると思いますが、焦って部屋を片づけないでください。まずは次の流れを、落ち着いてご確認ください。
- 警察へ連絡する:一人暮らしの方が自宅で亡くなっていた場合、死因を確かめるため、原則すべて警察の扱いになります。遺体や現場には触れず、まず110番を
- 警察の検視・現場確認:事件性がないかを調べます。この間(おおむね1〜2日)は、ご遺族も清掃業者も室内に入れません
- 死体検案書を受け取る:事件性がないと確認され、身元が分かると、ご遺族に連絡が来ます
- 死亡届・火葬の手続き:死亡届は、亡くなったことを知った日から原則7日以内に提出するとされています
- 賃貸なら、管理会社・大家さんに連絡:契約や原状回復の相談をします
- 特殊清掃・遺品整理:警察が現場を開放してから着手します
特殊清掃の作業内容と工程(消臭は“最後”)
特殊清掃には、実は「正しい順番」があります。ここを知っておくと、業者選びで失敗しません。
作業の全体の流れ
- 現場調査・汚染度の確認:においの強さ・害虫・床や壁のダメージ、そして「床下までしみ込んでいないか」を見て、見積もります
- 養生(保護):搬出のとき、共用の廊下やエレベーターを汚さないよう保護します
- 汚染物の除去:汚れがしみ込んだ家具・建材を撤去します
- 害虫の駆除:害虫が発生している場合に駆除します
- 洗浄・除菌・消毒:専用の薬剤で菌を取り除きます
- 遺品・残置物の整理:室内の家財を、遺品整理としてあわせて片づけます
- 消臭・脱臭:オゾンなどで、しみついたにおいを取ります
- 原状回復(必要な場合):床や壁の張り替えなど
「消臭は最後」が正解
意外に思われるかもしれませんが、消臭は、いちばん最後の工程です。
理由はシンプルで、においの元(汚染物や汚れた建材)を先に取り除かないと、いくら消臭しても効かないからです。捨てる予定の家財に消臭のお金をかけるのも、もったいない話です。
だから、「まず消臭します」と言う業者や、汚染物を残したままオゾン機だけ回す業者は、要注意です。
消臭の方法は、一つではない
においを取る方法には、いくつかあります。組み合わせるのが基本です。
- オゾン脱臭:オゾンの力でにおいを分解します。ただし装置を止めると効果は一時的なので、これ「だけ」では不十分なことも
- バイオ剤(酵素):繊維や素材にしみ込んだにおいを、分解して取り除きます
- 特殊コーティング:解体できないコンクリートなどに塗り、においを封じ込めます
「オゾンを当てて終わり」ではなく、元を断ってから、複数の方法で仕上げるのが、きちんとした特殊清掃です。
感染症への備え
発見が遅れた現場は、菌が繁殖していることがあります。専門業者は、全身の防護服・防護マスク・手袋を着け、使った防護具は再利用せず処分します。ご自身で作業するのが危険なのは、この点でもあります。
特殊清掃の費用相場(作業別・間取り別)
特殊清掃の費用は、汚れの程度・部屋の広さ・発見までの時間によって、大きく変わります。目安を見ていきましょう。
汚れの程度別の目安
| 汚れの程度 | 費用の目安 | 状態のイメージ |
|---|---|---|
| 軽度 | 10万〜30万円 | 発見が早く、汚れが限定的 |
| 中度 | 30万〜50万円 | においや汚れが広がっている |
| 重度 | 50万〜100万円以上 | 発見が遅れ、床下まで汚染・原状回復が必要 |
作業ごとの料金の例
内訳を知っておくと、見積りが適正かを判断できます(業者により幅があります)。
- 汚染箇所の特殊清掃:3万円〜
- 消臭・除菌剤の散布:1万円〜
- オゾン脱臭:3万円〜(1回・時間制の業者もあり)
- 畳の撤去:1枚 3,000円〜
- 床下の防臭処理:3万円〜
- 壁紙(クロス)の剥がし:1部屋 5万円〜
間取り別・総額の目安
間取りが広く、発見が遅れるほど、費用は高くなります。目安として、1K・早期発見なら30万円台、3LDK以上・重度なら90万円前後になることもあります(状態により大きく変わります)。
また、孤独死の現場では、特殊清掃に加えて遺品整理(残置物の処理)や原状回復もかかるのが一般的です。日本少額短期保険協会の調査では、原状回復の平均が約49万円(最大は約756万円)、遺品整理(残置物処理)の平均が約29万円と報告されています。
※上記は特殊清掃・原状回復・遺品整理を合わせた話です。費用が高くなりやすいのは、発見までに時間が経ったケース。においや汚れが床下・壁の奥までしみ込むと、張り替えや解体が必要になり、費用が上がります。
費用を抑えるには
- 相見積りを取る:2〜3社を比べると、適正価格と高すぎる業者が見えます
- 孤独死保険を確認する:賃貸なら、大家さん・管理会社に保険が使えないか確認を(後述)
- 遺品整理とまとめて頼む:別々に頼むより、出張や手配の手間・費用を抑えられます
特殊清掃の費用は、誰が払う?
「高額な費用を、誰が負担するのか」は、多くの方が不安に思う点です。基本の考え方は、次のとおりです。
- 持ち家の場合:原則として相続人が負担するとされています
- 賃貸の場合:借りていた本人(=故人)の原状回復義務を、相続人や連帯保証人が引き継ぐとされています
賃貸で、相続人も連帯保証人も対応できないときは、大家さんが負担することになります。
孤独死保険が使えることもある
賃貸で孤独死があった場合、大家さんが加入する「孤独死保険(家主型)」で、原状回復・遺品整理・家賃損失がカバーされることがあります。また、故人自身の火災保険(入居者向け)の特約が使える場合も。賃貸なら、まずは管理会社や大家さんに確認を。誰の・何の保険で使えるかは、孤独死した親族の遺品整理の記事でくわしく解説しています。
相続放棄を考えているときの、大切な注意
「費用を払いたくないから相続放棄する」という選択もあります。ですが、ここには落とし穴があります。
- 相続放棄には「相続を知ってから原則3か月」の期限があるとされています
- 価値のある遺品を処分・売却すると、「相続を認めた」とみなされ、放棄できなくなるおそれがあるとされています(法定単純承認)
- 相続放棄をしても、連帯保証人としての支払い義務は残るとされています
つまり、片づけを始める前に、判断が必要です。相続放棄を少しでも考えているなら、遺品整理や特殊清掃を発注する前に、弁護士や司法書士へご相談ください。
事故物件の告知義務は、どうなる?
「特殊清掃をすると、事故物件になって、次に貸せない・売れないのでは」と心配される方も多いです。ここは、国のガイドラインがあります。
国土交通省の「人の死の告知に関するガイドライン」(2021年)では、おおむね次のように整理されています。
- 老衰や病死などの自然死は、原則として告げなくてよいとされています
- ただし、発見が遅れて特殊清掃や大規模リフォームを行った場合は、告知が必要とされています
- 賃貸では、その死が「発覚してからおおむね3年」を過ぎると、原則として告げなくてよいとされています
- 売買には、こうした期間の定めはありません
- ただし、借りる人・買う人から問われた場合は、期間や死因にかかわらず告げる必要があるとされています
告げる内容も、発生(発覚)の時期・場所・死因・特殊清掃をした旨で足り、故人の氏名や具体的な状況まで伝える必要はないとされ、故人とご遺族への配慮がなされています。
失敗しない、特殊清掃業者の選び方
特殊清掃は金額も大きく、やり直しがききにくい作業です。ここは、知っているかどうかで大きく差がつきます。
「資格」だけを信じない
じつは、特殊清掃に、公的な免許はありません。「事件現場特殊清掃士」「遺品整理士」などの資格は、すべて民間の資格で、講座を受ければ現場未経験でも名乗れます。
資格があるに越したことはありませんが、「有資格=安心」ではないことは、知っておいてください。
本当に大切なのは「廃棄物の許可」
見落とされがちですが、遺品や不用品を運んで処分するには、市町村の「一般廃棄物収集運搬業の許可」が必要とされています。
- 産業廃棄物の許可では、家庭から出る遺品は運べません(許可の種類が違います)
- 無許可の業者に頼むと、不法投棄され、依頼した側が思わぬトラブルに巻き込まれるおそれがあります
「その遺品は、どの許可で、どう処分しますか?」と一言たずねてみてください。
チェックしたい5つのポイント
- 現地を見て、書面で見積りを出すか:電話だけの概算でなく、内訳の分かる見積書を
- 「一式○円」でなく、工程ごとの内訳があるか
- 追加料金の有無を明言するか:「見積り以上はかからない」と言えるか
- 消臭の仕上がりに責任を持つか:においが残った場合の再対応があるか
- 遺品整理もまとめて頼めるか:窓口が一つだと、負担がぐっと減ります
悪質業者の、よくある手口
- 激安で釣って、当日に高額請求:「業界最安値」の裏で、密室になってから追加を求める
- 「一式」で範囲をぼかす:あとで「床下は別料金」と上乗せ
- 必要のない全解体を勧める:消臭の技術がない業者ほど「全部壊すしかない」と言いがち
実際に、28万円の安さに釣られたら、汚れが手つかずで、別業者に頼み直して総額55万円を超えたという例もあります。悪質業者を見抜く質問は、「札幌の遺品整理の費用相場と、損しない業者選び」でも紹介しています。
依頼から完了までの流れ
はじめての方のために、大まかな流れをご紹介します。
- 相談・問い合わせ:まずは状況をお伝えください(写真があるとスムーズです)
- 現地確認・見積り:現場を見て、作業内容と総額をお見積り
- 契約・日程調整:内容にご納得のうえで、日程を決めます
- 作業:汚染物の除去・害虫駆除・除菌・遺品整理・消臭などを実施
- 原状回復(必要な場合)・完了確認:仕上がりを確認して完了
※特殊清掃の見積り・作業は、対応できる専門業者が担当します。開拓札幌は、遺品整理のご案内と、全体の窓口をまとめてお手伝いします。
【札幌】特殊清掃を頼むには
札幌で特殊清掃が必要になったら、遺品整理とあわせて相談できる窓口を持っておくと安心です。清掃・片づけ・供養を別々に手配するのは、精神的にも大きな負担だからです。
札幌ならではの、知っておきたいこと
- 冬でも油断できません:一般に冬は進行がゆるやかですが、北海道の住まいは暖房で室温が高く保たれるため、冬でも汚れやにおいが進むことがあります。「冬だから大丈夫」とは限りません
- 困ったときの相談窓口:札幌市には、高齢の方の見守り・相談を担う「地域包括支援センター」(市内各所)や、緊急通報の「あんしんコール」などがあります。生前の対策も、あわせて考えておくと安心です

開拓札幌にできること
私たち開拓札幌は、遺品整理のご案内を軸に、特殊清掃は対応できる専門業者にお繋ぎします。窓口をひとつにまとめることで、ご遺族の負担を少しでも軽くできればと考えています。
- 遺品整理は、お見積り以上の追加料金なし
- 動画・写真でのご相談も可能
- 仏壇やお守りの供養(お焚き上げ)のご相談も(→「札幌のお焚き上げ」)
特殊清掃についてよくあるご質問
Q. 特殊清掃は、どのくらいで終わりますか?
状態によります。軽度なら当日〜1日、中度で2〜3日、重度で発見が遅れた現場は、消臭や原状回復も含めて数日〜1週間ほどかかることもあります。
Q. においは、完全に取れますか?
多くは専門の消臭で取り除けます。ただし、床下や壁の奥までしみ込んだ重度のケースでは、床材や壁の張り替え(原状回復)が必要になることもあります。
Q. 近所に知られたくないのですが、配慮してもらえますか?
多くの業者が配慮に対応しています(社名の入っていない車で来る、私服で作業する、など)。「知られたくない」という希望は、相談のときにはっきり伝えるのがコツです。
Q. 遺品整理も、一緒に頼めますか?
はい。多くの場合、特殊清掃と遺品整理はあわせて対応できます。窓口が一つのほうが、手間も気持ちの負担も軽くなります。
Q. 見積りは無料ですか?
現地を見てのお見積りは、無料の業者が一般的です。金額だけでなく、内訳や追加料金の有無まで説明してくれるかを確認しましょう。
まとめ|特殊清掃は「早めの相談」と「正直な見積り」で
最後に、この記事の要点です。
- 特殊清掃とは、孤独死・事故などの現場から、汚れ・におい・害虫を取り除く専門の清掃。消臭は、元を断ってからの”最後”の工程
- 費用は状態しだいで軽度10〜30万円・重度50〜100万円以上。遺品整理・原状回復まで含めると、総額はさらに大きくなる
- 費用は相続人・連帯保証人が原則負担。孤独死保険が使えることもある。相続放棄は片づけの前に専門家へ
- 業者は「資格」より「許可」と「正直な見積り」で選ぶ
つらい出来事のあとに、慣れない判断を迫られるのは、本当に大変なことです。どうか、ご無理をなさらないでください。

