秋、ふわふわと白い綿のようなものが空を舞い始める。「あ、雪虫だ」と思ったら、顔にくっついたり、髪や服について取れなかったり。自転車に乗っていると、口や目に飛び込んできて、思わず立ち止まってしまう。札幌で暮らしていると、毎年おなじみの光景です。
「そもそも雪虫って何?」「いつまで続くの?」「刺したりしない?」「どうすれば服につかない?」。検索してここにたどり着いた方は、そんな疑問をお持ちだと思います。
先に、いちばん大事なことをお伝えします。雪虫は人を刺したり噛んだりしません。殺虫剤で駆除するような虫でもありません。数日から2週間ほどで、自然に見かけなくなります。だから、必要なのは「退治」ではなく、「うまくやり過ごす工夫」です。
この記事では、札幌市(保健所・博物館)の公式情報をもとに、雪虫の正体と時期を整理したうえで、服・髪・洗濯物・玄関・自転車・お子さんの登下校まで、シーン別の生活対策をまとめました。必要なところから読めます。
- 正体・時期を知りたい方 → 「雪虫とは?」「いつからいつまで?」の章へ
- 服・髪につくのが困る方 → 「服・髪についたときの対策」の章へ
- 家に入れたくない・自転車がつらい方 → 「家に入れないコツ」「自転車・登下校の工夫」の章へ
- 駆除したほうがいい?と迷う方 → 「駆除は必要?」の章へ
私たち「くらしの味方 開拓札幌」は、札幌で住まいの困りごとの相談窓口を運営しています。ですがこの記事は売り込みではなく、雪虫の季節を少しでも快適に過ごすための実用ガイドです。特定の業者に肩入れせず、中立の立場でお役立ち情報をお届けします。
雪虫とは?正体は「トドノネオオワタムシ」というアブラムシ
雪虫は、俗称です。札幌市博物館活動センターの解説によると、私たちが「雪虫」と呼んでいる白い虫の正体は、アブラムシの仲間で、正式な和名を「トドノネオオワタムシ」といいます。「トドノネ」は、トドマツの根(ね)という意味です。
体は数ミリと小さく、体全体が白い綿のようなものに包まれています。この綿が雪のように舞って見えることから、「雪虫」の名がつきました。
白い綿の正体は「ロウ物質」
あの白い綿は、糸くずやほこりではありません。雪虫が自分の体の中から出しているロウ物質(ろう)の綿毛です。札幌市博物館の解説では、「なぜ白い綿毛をまとっているのかは、まだはっきりしたことは分かっていません」とされています。身近な虫ですが、生態にはまだ謎が残っているのですね。
札幌でよく見る雪虫は、実は2種類いる
札幌市保健所の案内では、「雪虫」と呼ばれる虫にはもう1種類いることが紹介されています。
- トドノネオオワタムシ:白い綿を持つ、いちばん有名な雪虫
- ケヤキフシアブラムシ:ケヤキとササの樹液を吸って育つ仲間。こちらも「雪虫」と呼ばれ、しばしば大量発生して視界が悪くなることがあるとされています
札幌市内でとくに大量発生して話題になるのは、後者のケヤキ由来のタイプだと指摘する専門家もいます。いずれもアブラムシの仲間であることに変わりはありません。
人を刺したり、噛んだりはしない
心配されやすい点ですが、札幌市保健所ははっきりと「人に危害を加えることはありません」と明記しています。蚊やブヨのように刺すことも、毒を持つこともありません。顔や口に飛び込んでくる不快さはありますが、健康被害を与える虫ではない、というのが公式の説明です。
雪虫はいつからいつまで?札幌は「10月下旬」が中心
雪虫を見かける時期は、意外と知られていませんが、年に2回あります。札幌市保健所の案内によると、羽と白い綿の生えた雪虫の姿が現れるのは、次の2つの時期です。
- 初夏(6月下旬〜7月上旬ごろ):木々の間を移動する時期。数は少なく、見過ごされがち
- 晩秋(10月下旬ごろ):私たちが「雪虫」として大量に見かけるのは、こちらの時期です
つまり、札幌で「雪が降る前触れ」として話題になる雪虫は、10月下旬を中心とした、秋の終わりの数週間に集中します。
なぜ秋にたくさん飛ぶのか
雪虫が季節の変わり目に一斉に飛ぶのには、はっきりした理由があります。札幌市博物館の解説をたどると、雪虫(トドノネオオワタムシ)は次のような1年を過ごしています。
- 春:平地の湿地に生えている「ヤチダモ」の木で孵化する
- 夏のはじめ:ヤチダモから「トドマツ」の木へ引っ越す
- 夏の間:トドマツで1〜2回、世代交代をくり返して数を増やす
- 秋の終わり:再びヤチダモの木へ向かって移動する
私たちが秋に見る雪虫は、この「トドマツからヤチダモへ引っ越しをしている最中」の集団なのです。多くの個体が一斉に移動するため、空を舞う姿が目立つ、というわけです。

「雪虫が飛ぶと初雪が近い」は本当?
北海道では昔から「雪虫を見かけると、まもなく雪が降る」と言われてきました。実際、気象予報士の解説(tenki.jp)によると、北海道の初雪の平年日は、札幌でおよそ10月28日。雪虫が飛び始める10月下旬と、ちょうど重なります。
ただし、これは「雪虫が初雪を予知している」という意味ではありません。雪虫は飛ぶ力が弱いため、風の弱い、穏やかに晴れた日をねらって飛び立ちます。そうした高気圧の日が過ぎると、その後に冬型の気圧配置となって、雪が降りやすくなります。つまり「雪虫が飛ぶ気象条件」と「初雪が近づく気象条件」が結果的に重なりやすい、という関係だと考えられています。
言い伝えとしては当たっていますが、「雪虫=初雪の日を教えてくれるカレンダー」ではない、という点だけ覚えておくと安心です。
いつ終わる?=終わりのサイン
雪虫の飛ぶ期間は、そう長くは続きません。大量発生した年でも、目立って飛ぶのはおおむね数日〜2週間ほど。引っ越しが終われば、ぱたりと見かけなくなります。
本格的に気温が下がり、初雪が降るころには、ほとんど姿を消します。「もう限界……」と感じても、殺虫剤を買いに走る前に、あと少しの辛抱で自然に収まる、と考えて大丈夫です。
なぜ大量発生する年がある?カギは「夏〜秋の暑さ」
雪虫は毎年飛びますが、「今年は特にひどい」という年があります。ニュースになるほどの大量発生には、いくつかの理由が重なっています。
夏〜秋の気温が高いと、繁殖が加速する
いちばん大きな要因が、気温です。気象予報士の解説(tenki.jp)によると、雪虫は夏から秋にかけての気温が高いと繁殖が活発になり、世代交代のサイクルが早まって数が増えます。記録的な猛暑が続いた年の秋は、大量発生につながりやすい、というわけです。
アブラムシならではの、爆発的な増え方
雪虫はアブラムシの仲間で、条件が良いと短期間でものすごい勢いで数を増やす性質があります。メスだけで子どもを産める(オスがいなくても増えられる)ため、暖かさが続くと一気に個体数がふくれ上がります。
天敵が少ないと、歯止めがきかない
本来、雪虫はクモやテントウムシなど、多くの生き物に食べられる「弱い虫」です。数を産むことで生き延びる戦略の虫なので、天敵となる昆虫が少ない環境では、増えた数がそのまま残りやすくなります。都市部で目立ちやすいのは、こうした事情もあると考えられています。
まとめると、「暑い夏〜秋」×「爆発的な繁殖力」×「天敵の少なさ」が重なった年に、視界がかすむほどの大量発生が起きる、というイメージです。
服・髪についたときの対策|「潰さず、つまむ」が正解
ここからは、実際の生活対策です。まずは全体像を、シーン別の早見表にまとめました。細かいコツは、このあとの各章で説明します。

まずは、いちばん困る「服や髪についてしまう」問題から。ポイントは、付いてから慌てるより、付きにくくする工夫と、付いたときの正しい取り方の2つです。
服は「ツルっとした素材」を選ぶ
雪虫は、表面に引っかかりのある布に付きやすい虫です。雪虫が多い日に外を長く歩くなら、ナイロンやビニールのような、つるつるした素材のアウターが味方になります。ウールのニットやフリースは、綿毛が絡んで取りにくいので、雪虫のピークの時期は避けると楽です。
白っぽい服は、付いても目立たない
雪虫は白いので、黒や濃紺の服だと、付いたときにとても目立ちます。どうしても気になる日は、明るい色・白っぽい色の服のほうが、見た目のストレスは減ります(付く量そのものが変わるわけではありませんが、気分の問題として)。
取るときは「潰さず、そっとつまむ」
これがいちばん大事なコツです。服についた雪虫を、手でバンバン払うのは避けてください。潰れると、体液が服にしみて、シミになりやすいからです。
- 基本はそっとつまんで、外に逃がす(雪虫は無害なので、素手でも問題ありません)
- 数が多いときは、息を吹きかける・うちわであおぐなど「風」で飛ばすと、触れずに落とせます
- 玄関先で粘着カーペットクリーナー(コロコロ)を軽く転がすのも手軽です
髪についたときは、乾いた状態で払う
髪についた雪虫は、濡れた手でこするとかえって潰れて広がります。乾いた手や、目のあらいブラシで、やさしく払うのがコツ。帰宅後に髪をとかせば、たいていは落ちます。フードや帽子をかぶっておくと、そもそも髪に付きにくくなります。
シミになってしまったら、早めに水洗い
潰れて服にシミがついたら、乾いて固まる前に、早めに水で洗い流すのが基本です。時間が経つほど落ちにくくなるので、帰宅したらすぐ、その部分を水でつまみ洗いしておくと安心です。
家に入れないコツ|網戸・玄関・洗濯物の3つ
雪虫は小さいので、ちょっとした隙間から室内に入り込みます。札幌市保健所も、対策として第一に「網戸を取り付けること」を挙げています。家の中に入れないための、3つのポイントを押さえておきましょう。
1. 網戸を閉める・破れをふさぐ
基本は網戸です。雪虫のピークの時期は、窓を開けるときは必ず網戸を閉める。網戸の破れや、サッシとのすき間があると、そこから入ってくるので、気になる箇所はすき間テープなどでふさいでおくと安心です。換気は、雪虫の少ない時間帯(後述)に短時間で済ませるのがコツです。
2. 玄関は「開けっぱなし」を避ける
意外と侵入口になりやすいのが玄関です。荷物の出し入れなどでドアを長く開けておくと、その間に入り込みます。開ける時間を短くする、風下側で開閉する、といった小さな工夫で、入ってくる数はかなり減ります。入ってしまった雪虫は、無害なので、あわてず窓を開けて外へ誘導するか、コロコロやティッシュでそっと取れば大丈夫です。
3. 洗濯物・布団は「取り込む前にひと払い」
外干しの洗濯物や布団は、雪虫がつきやすい場所です。とくに白い綿の雪虫は、白いシーツやタオルに紛れて気づきにくいので注意します。
- 雪虫が多い日は、部屋干しや乾燥機に切り替えるのがいちばん確実
- 外干しするなら、取り込む前に、外で軽く振り払う。ここで払っておくと、室内に持ち込みません
- 干す時間帯を、雪虫の活動が落ち着く時間(風の強い日や、日中の早い時間)に寄せる
自転車・お子さんの登下校の工夫
雪虫がいちばんつらいのは、外を移動しているときです。とくに自転車や、通学中のお子さんは、正面から雪虫の群れに突っ込む形になりがち。ここでは、移動時の工夫をまとめます。
雪虫が多いのは「風の弱い、晴れた日の夕方」
まず知っておきたいのが、雪虫が活発に飛ぶ条件です。飛ぶ力が弱い雪虫は、風の弱い・よく晴れた日の、夕方の時間帯にとくに多く舞います。逆に、風の強い日や雨の日は、あまり飛びません。
この傾向を知っておくと、「今日は風がないから、夕方は多そうだ」と予測が立ちます。急ぎでなければ、雪虫が多そうな夕方の移動を、少し前後にずらすだけでも、遭遇はぐっと減ります。
自転車では「メガネ・マスク」で目と口を守る
自転車で顔に雪虫が当たると、驚いてハンドルをとられ、思わぬ事故につながることもあります。安全のためにも、次のような備えが有効です。
- メガネ・サングラス:目に入るのを防ぐ。面積の大きいものほど安心
- マスク:口や鼻への侵入を防ぐ。手軽で効果的
- 雪虫が特に多い区間は、無理に走らず、自転車を降りて押して歩く。視界が悪いまま走るより安全です
車のフロントガラスに付いたときは
車で通勤・送迎する方も、雪虫の付着に悩まされます。フロントガラスに大量に付くと視界が悪くなり、そのまま走ると危険です。次の点に気をつけてください。
- ワイパーで空拭きしない:乾いたままワイパーを動かすと、雪虫が潰れて広がり、かえって視界が悪化します
- ウォッシャー液を出してから拭く:水で流してからワイパーを使うと、シミになりにくく落ちやすいです
- 駐車は、風の弱い夕方の屋外を避ける:屋根のある場所やカバーがあると、付着そのものを減らせます
お子さんの登下校は「声かけ」と「装備」で
通学路に街路樹の多い公園などがあると、そこが雪虫の通り道になっていることがあります。お子さんには、次のように伝えておくと安心です。
- 雪虫は刺さない・害はないと教えて、怖がらせない(パニックで飛び出すほうが危険です)
- 目に入りそうなときは、目を細めて、下を向いて通り抜ける
- 帽子やフードをかぶると、髪や顔への付着が減る
- ランドセルや服についても、玄関で払ってから入るよう習慣づける
雪虫は駆除が必要?結論は「不要」です
「これだけ大量にいるなら、殺虫剤で駆除したほうがいいのでは」と考える方もいます。ですが結論から言うと、雪虫を駆除する必要はありません。理由を、正直にお伝えします。
殺虫剤は、ほとんど意味がない
雪虫は、特定の巣にとどまる虫ではなく、木から木へ「引っ越し」の途中で空を舞っている集団です。次から次へと飛んでくるので、その場で殺虫剤をまいても、キリがありません。屋外にまくのは、費用も手間も見合わないうえ、雪虫を食べてくれる天敵の虫まで減らしてしまいます。
数日〜2週間で、自然に終わる
前の章でも触れたとおり、雪虫のピークは長くても2週間ほど。引っ越しが終われば、自然に見かけなくなります。「駆除する」より「やり過ごす」ほうが、はるかに現実的です。この記事で紹介した生活対策で、期間中を乗り切るのが正解です。
ただし「庭木のアブラムシ被害」は別の話
ひとつだけ注意点を。空を飛んでいる雪虫は駆除の対象ではありませんが、雪虫と同じアブラムシの仲間が、庭木につくと、木そのものが弱ることがあります。葉が縮れる、すす病で黒くなる、といった症状が庭木に出ている場合は、雪虫対策とは別に、庭木の手入れとして考える必要があります。
庭木の剪定や、木の健康が気になる方は、札幌の庭木の伐採・剪定・草刈り|費用相場と業者の選び方で、手入れの方法と業者の選び方をまとめています。あわせてご覧ください。
雪虫についてよくある質問
Q. 雪虫は刺しますか?害はありますか?
刺しません。札幌市保健所も「人に危害を加えることはありません」と明記しています。毒もなく、噛むこともありません。ただし、まれに肌についてかゆみを感じる方や、大量の中で口・鼻に入って不快に感じる方はいます。気になる場合は、肌についたら洗い流し、マスクや眼鏡で防ぐと安心です。
Q. 服についたシミが取れません。
雪虫を潰すと、体液が布にしみてシミになります。乾いて固まる前に、早めに水でつまみ洗いするのが基本です。時間が経ってしまった場合は、洗濯用の部分洗い剤を使い、通常の洗濯を。落ちにくい素材は、無理にこすらず、クリーニングに相談するのが安全です。予防としては、次から「潰さず、つまむ・風で飛ばす」を心がけてください。
Q. 雪虫が出たら、初雪はいつごろですか?
札幌の初雪の平年日は、およそ10月28日です。雪虫が飛び始める10月下旬と重なるため、「雪虫を見たら冬支度を」という目安にはなります。ただし、雪虫が初雪の日を正確に予知しているわけではありません。その年の天候によって前後するので、あくまで「そろそろ冬」の合図として受け止めてください。
Q. 白い雪虫と、黒っぽい雪虫がいるのはなぜ?
「雪虫」と呼ばれる虫は1種類ではありません。白い綿をまとった有名なものが「トドノネオオワタムシ」、綿が目立たず黒っぽく見えるものに「ケヤキフシアブラムシ」があります。どちらもアブラムシの仲間で、人には無害です。札幌市内で視界がかすむほど大量発生するのは、ケヤキ由来のタイプだと指摘されています。
Q. 雪虫は殺虫剤で駆除したほうがいいですか?
その必要はありません。雪虫は木から木へ移動する途中で飛んでいるだけなので、殺虫剤をまいてもキリがなく、数日〜2週間で自然に収まります。この記事の生活対策で、期間中をやり過ごすのがおすすめです。
まとめ|雪虫は「退治」ではなく「やり過ごす」
最後に、大切なところをおさらいします。
- 雪虫の正体はトドノネオオワタムシ(アブラムシの仲間)。人に危害はなく、刺さない
- 札幌で大量に見るのは10月下旬が中心。木の引っ越しの最中で、ピークは数日〜2週間
- 「今年は多い」は、夏〜秋が暑かった年のサイン
- 服は潰さず、つまむ・風で飛ばす。家は網戸・玄関・洗濯物の3つで防ぐ
- 移動は風の弱い晴れの夕方を避け、メガネ・マスクで。お子さんには「刺さない虫」と伝える
- 駆除は不要。殺虫剤より、この時期だけの工夫で乗り切る
雪虫は、札幌に本格的な冬が来る前の、短い季節のできごとです。正体と対策さえ分かっていれば、必要以上に身がまえることはありません。うまくやり過ごして、これから始まる冬支度を進めていきましょう。
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